今回ご案内している「困難な時代にコンパッションを生きる」について、
2020年5−7月に実施した日本語通訳つきオンラインプログラム「コンパッションを生きる」と
どう違うのか? 異なる内容なのか? とのご質問をいただきました。
そこで、この2つのプログラムの比較について書いてみます。
「コンパッションを生きる」は、
講師ロバートによる初の日本人向けのオンラインプログラムだったので、
Living Compassion [コンパッションを生きる]の概要となる基本的な内容でした。
実際にスタートしてみて初心者の方が多く通訳を通したオンラインということもあり、
「言葉の定義やプラクティスのやり方などがより理解しやすいよう超ベーシックな内容に絞り、
なるべく言葉を重ねずにシンプルに伝えることを意識した」とロバートは話していました。
とはいえ、ロバートはいつも基本的なコンセプトを重ねて何度も伝えているので、
このプログラムはロバートのワークの中心に触れるものだったと私は捉えています。
一方で「困難な時代にコンパッションを生きる」は、英語のプログラムで、
参加者の多くがロバートのリアルのワークショップや2年プログラムに参加した人でした。
タイトルに「困難な時代に」とついていますが、
これはこの数年のアメリカを中心にした分断が進む政治・社会状況なども意識されていると思います。
このセッションが実際に英語で提供されたのは、2020年の7月から9月。
新型コロナウイルスの感染拡大、人種差別と公権力の問題、大統領戦などに高い関心が集まった時期でした。
すでにロバートのワークを学び、実際にプラクティスを重ねる人たちが、
外側の世界で否が応にも起こる出来事から刺激を受ける中で、どのようにしてコンパッションを生きるのか?
セルフ・コンパッションを実践する際の、より具体的な方法を紹介していたと私は捉えています。
「続きのような内容になるのか? それともこれまでとは異なる内容なのか?」というご質問がありました。それについては、私はよく、ロバートはいつも同じことを言っている……、と思います。
2年プログラムでも、もちろんようやくこれ教えてくれるんだ! というのもありますが、
多くは、同じことを違う形で語っているように受け取っています。
それは、「何が湧き上がってきても、それと共にいる」。
頭でこれを理解し認識することと、日々、一瞬一瞬、生活の中で実践することは、
全く別ものだというのが私の体験です。
頭でわかっていたって、できない時にはできないし💦
考えやストーリーを真実だと信じ込んでいて、自分自身と同一化していることがどれほど多いかー。
私はこの2年、彼のプログラムに参加する中でそれに気づかされ続けています。
だからこそ、何度も何度も、繰り返し繰り返し、
異なる視点や違う言葉でロバートから聞くことに価値がある。
だんだん、徐々に、少しずつ。
刺激と反応の間にあるスペースに留まり、
飲み込まれないで選択する力を持つことができるようになっていくのではないかと、私は思っています。
プログラムで紹介されるプラクティスも似たようなものが多いです。
ロバート自身、今回のプログラム「困難な時代にコンパッションを生きる」のセッション1の冒頭で以下のように語っていました。
「私のオンラインプログラムに参加しその構成をよく知っている人や、対面リトリートに参加したことがある人にとっては、似たような、もしくは同じように見える内容やエクササイズを紹介することになるでしょう。そう見えたとしても、それぞれのプロセス、それぞれのエクササイズに、全く新しい新鮮な方法でアプローチすることをおすすめします。
私は"螺旋"という比喩を使うのですが、螺旋状の円に沿って深まり続ける次元を下っていくと、円の中の同じような点ではあるのだけれどどんどん深いところにいきます。表面的には似たような位置に見えるけれど、深まっていくのです。アプローチや経験の深まりを説明する上で、私にはこの比喩がぴったりきています」
今回、「コンパッションを生きる」で初めてロバートのプログラムを受け、続けて「困難な時代にコンパッションを生きる」を受講し、翻訳にも協力してくれた Sachie Tsuzukiさんに、両方を受けた感想をいただいたのでご紹介します。
"日本語でのコースを受けてこその次のステップとして、「困難な時代にコンパッションを生きる」を受けられて良かったと思っています。
ロバートが大事にしている用語(プレゼンス、ロンギング、アクセプタンス、イノセンスなど)をしっかり説明してくれているので理解を深められたし、いのちに出会う方法を探求していくために具体的な実践方法のヒントが多く得られるコースだったと思います"
簡単ではありますが、全6回のセッションで出てきた内容を以下にご紹介します。
あくまでも私が捉えているものなので、それぞれの方が受け取るものが異なることもあるだろうということも、合わせてお伝えしておきたいと思います。
Session 1
ケン・ウィルバーのインテグラル理論の四象限を紹介
自分が行っているワークがどこに位置し、どう捉えているか?
なぜセルフ・コンパッションのワークが重要で、結果としてどういうことが起こるのか
Session 2
嘆き(グリーフ)とトラウマ、とくに発達性トラウマについて
トラウマがいかに今もからだに残っているかと、
そこにセルフコンパッションでどうアプローチして、何が起こるのか
デモセッションでは、世界・この国(アメリカ)の一部でいることについての感覚について扱っています。
Session 3
セルフ・レスポシビリティの認識、いわゆる”自己責任”との区別と、エージェンシー(行為主体性)についてより深い説明
マインド・思考・意識・インプレッションについて。外側の刺激を、これらがどう受け取るか?
マインドについて2つの区別(マインドフルネスでいうモンキーマインドと、反応的な思考)
それらに対してのアテンション(気付き)の力。
デモセッションは、身近な人が病気になったり悲劇や死を体験していることについて行っています。
Session 4
外側の刺激を受け取り、伝達する楽器としての自分をどう調律するか?
反応から選択へ思考、感情、考えというかたちをとる抵抗へのアプローチ
アクセプタンスとは? 諦めることとの違い
抵抗の奥から湧き上がってくるロンギングについて
デモセッションは、NVCの練習会で相手に共感していたときに、「相手が頭のなかにいたようだった」と語るデモ相手の描写をきっかけに、その人の奥にあるものに繋がっていくプロセスでした。
Session5
プレゼンスを育むこと、そしてプレゼンスを対人関係に持ち込むこと
主観と間主観の世界と、プレゼンス
アテンション、アウェアネスについて
望ましくない音を、ロバートがどう受け取っているかの実例
長めのガイドプロセス(地球・環境・人類のコミュニティの中にいる自分)
Session 6
感謝と嘆きの奥にあるかけがえのないもの
ハートへの扉を開く
身体的な知性、エネルギー的な体験
これらが何かのご参考になれば嬉しいです。
Taeko Sagisaka
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